日本のハイパーインフレが具体的にいつ発生するのか予測することは困難ですが、数十年以内には確実に起こるだろうというのが私の見立てです。今後いくつかの記事で、そもそもなぜ日本がハイパーインフレに陥ると考えられるのか、説明していこうと思います。
ハイパーインフレは天使の顔をしてやってくる
ハイパーインフレと聞くと、札束をボストンバッグで運んで買い物をするような極端なシチュエーションを思い浮かべるかと思います。しかし、それは末期の話であって、ハイパーインフレも初期にはマイルドなインフレの顔をしてやってきます。
第一次世界大戦後のドイツがハイパーインフレに陥ったことはよく知られていますが、下記の数字を見ればわかるように、当初はそれほど危機感がなかったようです:
1918年の10月までにマルク紙幣の量は戦前の1913年と比較して4倍になったが、ドイツにおける物価は139%しか上昇しなかった
Lessons of the German Inflation – Foundation for Economic Education
5年で139%の上昇率は、年率換算すると約19%です。高いインフレ率には違いありませんが、ハイパーインフレというほどのものではないでしょう。しかし、当時のドイツ帝国銀行はこのインフレを抑えることができずに、ハイパーインフレへと悪化させてしまいました。
現在の日本でも、インフレーションになると、たとえそれがマイルドなものであっても、やがてハイパーインフレになってしまう可能性が高いでしょう。その理由を見ていきたいと思います。
壊れた日銀の金融政策ツール
日銀がインフレーションを抑え込むために、現在以下のようなツールがあります:
- 公開市場操作
- 日銀当座預金残高の利息
また、現在は使われていませんが、以下のようなツールも過去にはありました:
- 公定歩合
- 法定預金準備額
しかし、日銀がこれらのツールを使ってインフレーションを抑えることは難しいといえます。その理由をツールごとに見ていきましょう。この記事では公開市場操作について説明し、そのほかの手段については次回の記事に回したいと思います。
公開市場操作ができない理由
現在最も普通に行われているのが公開市場操作です。これは、日本銀行が国債やその他の資産を金融機関を相手に売買して、世に出回るお金の量を調節する方法です。
この方法を使ってインフレーションを抑えたい時は、日銀は国債やその他の資産を売り、その対価としてお金を受け取ります。すると日銀以外が持っている世の中のお金の量は減りますから、お金の価値が高まってインフレーションは収まることになります。
現在、日銀は国債を売るのではなく買う立場にあります。下の図は日本経済新聞に掲載されたもので、日本銀行による国債の購入額の推移を表しています。

近年は減少しているとはいえ、毎年何十兆円も日銀は国債を購入していることがわかります。これこそが現在の日銀には公開市場操作によってインフレーションを抑えられない理由です。
これだけの額の国債を購入している日銀が、突然国債を売りはじめると、その価格は暴落してしまうことになります。債券についての基本的な知識ですが、債券の価格が暴落すると、金利は暴騰します:
債券価格は、金利が上昇すれば下落し、金利が低下すれば上昇します。
債券:債券価格と金利の関係は? – 大和証券
つまり、国債の価格が暴落するということは、政府が新たに発行したり、借り換えたりする国債の利息も激増するということです。そしてその利息は、政府がさらに追加の国債を発行することによって賄われます。
この状態を放置すると、政府の借金は雪だるま式に膨れ上がって破綻してしまいますから、日銀は国債を引き受けてやらなければなりません。国債を売るのをやめて再び買う側に回らなければならないということです。
国債を売るのをやめてしまって逆に買っているわけですから、この時点で日銀はインフレを抑えるための公開市場操作に失敗していることになります。
このように、現在の日銀は政府が破綻しないように国債を買い続けなければならないため、公開市場操作によってインフレを抑えることができないのです。
次回は、公開市場操作以外の金融政策ツールを使ってインフレを抑制することができるのか見ていきましょう。