このブログの読者の一定数は、住宅ローン金利についての記事を検索結果で見つけてくださった方のようです。多くの方が、固定金利の住宅ローンをインフレ対策として活用する方法を模索していらっしゃるということだと思います。
今回の記事では、住宅ローン金利の利率が決定する前に固定金利が暴騰してしまうことを恐れている方のために、対策をご紹介いたします。
フラット35の金利は実行時に決定する
さて、インフレ対策をするのであれば、住宅金融支援機構が仲介するフラット35が断然おすすめであることはこちらの記事でご紹介した通りです。
しかし、もしも実際に住宅購入費用を支払うのがしばらく先のことであれば、フラット35の金利が決定するのも先のことになってしまいます。
フラット35とほとんどの民間ローンは「実行時金利」が適用されます。
金利の決定時期は? – 住宅金融支援機構
とくに、購入の決定から入居できるまでに時間がかかる新築の住宅の場合には問題になることが多いでしょう。
もしも、決済するまでの間に金利が暴騰するようなことがあれば、人生計画を根本から覆すようなダメージになる可能性があります。たとえば、5,000万円を借入れた場合、金利が1.35%であれば支払い総額は6,277万円で済みますが、金利が7.28%の場合には支払い総額が13,831 万円と倍以上に跳ね上がってしまうからです。

2022年2月現在、日銀は長期金利が0.25%を超えないように無制限に10年の国債を買い入れることを発表していますから、上記のようなことが直ちに起こることはないでしょう。ただし、今後さらに世界でインフレが進んで外国との金利差が拡大した場合、日銀が金利を抑えることの悪影響を恐れて国債の購入を手控えることは十分に考えられます。
支払い総額の増加分もうける
対策としては、長期国債の金利が暴騰した時に、ローンの支払い総額の増加分もうかるような金融商品をもっておけばよいことになります。もうかった分を支払いの増加分に当てるのですから、自分の懐は痛みません。
その具体的な方法を、藤巻健史さんという方がご自身の著書「藤巻健史の資産運用大全」で紹介しています。彼は、かつてモルガン銀行で巨額の利益を自行にもたらし、世界的な投資家であるジョージ・ソロス氏とも働いたことのあるトレーダーです。
さて、その具体的な方法とは、長期国債の先物を売ることです。
先物取引とは、ある商品(原資産)を、将来の決められた日(期日)に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。
先物取引とはどのような取引ですか? – 松井証券
住宅ローン金利の高騰をヘッジする場合、原資産は国債で、期日は住宅ローン金利が決定する日の前後ということになります。金利が急騰すると国債の価格は大きく下落しますが、先物をあらかじめ売り建てておけば、自分は元々決まっていた高い値段で国債を売ることができるので、その差額分得をすることになります。
先物をいくら売ればいいのか
さて、日本でやり取りされる長期国債の先物取引の原資産は、額面100円、利子6.0%、償還期間10年の国債です。2022年2月中旬現在、これが150円程度で取引されています。
なぜ国債の額面に対してこんなに価格が高いのかというと、現在は金利が極めて低いためで、150円という価格から導き出される国債の利回りは0.067%です。しかし、もしも長期金利が6.0%に急騰した場合、原資産の価格はちょうど100円になるので、先物を売っていた人には50円の儲けが出ることになります。
実際には国債の先物を100円から売ることはできません。個人投資家向けには、ミニ長期国債先物というものがあり、1枚1000万円が最小単位とされています。
では、このミニ長期国債先物を何枚買えば住宅ローンのヘッジになるのでしょうか? 基本的には、借り入れ金額と同じかそれよりも少し多い額を売るべきでしょう。
先ほど、住宅ローン金利が1.35%から7.28%に上昇した場合の話をしましたが、年間の住宅ローン負担の増加分は以下の通りになります:
(33万円 – 15万円) × 12ヶ月 = 216万円
一方、ミニ長期国債先物を5枚(額面で5000万円分)売っておいた場合、長期金利が6.0%に上昇すると以下の額の利益が出ます:
(150円 – 100円) × 100,000 × 5枚 = 2500万円
この2500万円を国債と同じ利回り6.0%で運用することができれば、年間150万円のキャッシュフローを得ることが可能です。住宅ローン負担の増加分をかなりカバーすることができます。
実際には、インフレが原因でこのように金利が急騰した場合、ご自身の保有する資産や給与も上昇するでしょうから、不足分はこれで賄うことができるでしょう。それでも不安な場合は、先物をもう少し売り増してもいいかもしれません。
ミニ長期国債先物の売り方
日本取引所グループによれば、ミニ長期国債先物を個人投資家向けに取り扱っている証券会社には以下があります:
こちらで口座を開設することで、ミニ長期国債先物をやり取りすることができるようになります。
ところで、ミニ長期国債先物を売るのに必要な手元のお金は、原資産の価格よりもはるかに低いことが光世証券のウェブサイトに記載されています。入金する必要のある証拠金は、小さな金利の上下に対応できる程度の額なので、個人でも十分に対応することができそうです。
先物を売り立てることに、リスクがあることは当然念頭に置いておくべきでしょう。もしも日銀が長期金利を無理にマイナスにするようなことがあれば、国債のショート・ポジションは大きな損を出してしまいます。
国債の利回りがマイナスになった場合、購入して満期まで保有するよりも、現金を保有した方がトクになってしまうため、それほど持続的な状態ではないことが予想されます。しかし、何が起こるかわからないのがマーケットですから、市況に目を光らせておくことは必要でしょう。
また、国債の先物が多くやり取りされているのは、実際には直近の限月のものです。つまり、あまりに期日が先の先物を売ろうとしても、買い手がいないことが予想されます。このような場合には、近い期日の先物を売り、期日が近づいたらロールオーバーというものをしてやる必要があります。より詳しい情報については、「藤巻健史の資産運用大全」をご参照ください。
より詳しく長期国債先物の仕組みについて知りたい方は、光世証券の国債先物取引についての説明をこちらからご覧ください。