2023年4月追記:三菱UFJ銀行のカリフォルニアアカウント・プログラムは、ユニオン・バンクの売却にともなって終了しました。ご留意ください。
今回の記事では、日本で預金封鎖が行われた場合に備えて、今だけできる対策をひとつ紹介いたします。具体的には、三菱UFJ銀行のカリフォルニアアカウント・プログラムでユニオン・バンクの口座を開設して、ドル預金をする方法です。
預金封鎖の歴史と現実性
預金封鎖とは、銀行預金などの金融資産の引き出しを政府によって制限されることです。
いざハイパーインフレの兆しが見えると、国民や企業は価値の下がる日本円を手放して外貨や実物資産に変えようとします。これが日本円のさらなる暴落を招いて、インフレがひどくなる悪循環に陥ってしまいます。
これを防ぐために、日本円を自分の口座から引き出せないようにしてしまうのが預金封鎖というわけです。
過去、日本でも現実に預金封鎖が行われた事例があります。
「インフレ防止の緊急令出づ けふから預金封鎖 一般引(き)出(し)を禁ず」。1946年2月17日の毎日新聞は、前日夕に発令された金融緊急措置令を大きく伝えた。
<毎日新聞1946>「預金封鎖」 国民の財産を侵害
ただし、上記の預金封鎖が実施されたのは、現在の日本国憲法が施行する前の話です。財産権が保証されている現在の日本国憲法下でも政府による預金封鎖は可能なのでしょうか。
日本国憲法では財産権について以下のように記載されています:
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
衆議院 ー 日本国憲法
これからわかるように、具体的に何が財産権に当たるのか憲法に記されているわけではありませんから、国会が緊急的に立法で「公共の福祉に適合するように」財産権を定めることは理論上可能なわけです。
いざ消費者物価が暴騰すれば、預金がほぼゼロの多くの人にとってはむしろ都合のよいことですから、そういった人々の支持を背景に、政府が預金封鎖を実施してしまうのもあり得ないことではないように思えます。
三菱UFJ銀行によるユニオン・バンク売却
さて、海外法人の銀行口座を持つことができれば日本政府の力は及ばないので、預金封鎖の対策になりうるわけですが、日本在住の日本人が海外口座を持つのはそれほど簡単なことではありません。これは近年各国のマネー・ロンダリング対策が厳しくなり、非居住者による口座の解説が難しくなっているためです。
中でも、現地に赴くことなくアメリカの銀行口座を開設することができるのは、三菱UFJ銀行が傘下のユニオン・バンクの口座開設をサポートするカリフォルニアアカウント・プログラムがほぼ唯一の方法と言えます。
カリフォルニアアカウント・プログラムなら、米国の銀行口座を日本にいながら、日本語で開設できます。
海外口座ご紹介サービス《カリフォルニアアカウント・プログラム》
さて、このユニオン・バンクですが、三菱UFJ銀行は大企業向けの部門を残して売却することを発表しました。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は21日、傘下の米地銀MUFGユニオンバンクの個人向けと中小企業向け部門を、米地銀大手USバンコープに約8800億円で売却すると発表した。
(中略)
株式は来年6月までの売却完了をめざす。
朝日新聞デジタル – 三菱UFJ、傘下の米地銀ユニオンバンク売却 8800億円
これは預金封鎖対策のために口座を開設した日本人の顧客にとって、メリットとデメリットの両方があると思います。
メリットは、今後ユニオン・バンクは日本となんの関係もないアメリカの銀行になるということです。日本政府の意向は及ばないでしょうから、メガバンク傘下の地銀の口座よりもより強固な預金封鎖対策になり得ます。
デメリットとしては、日本語によるサポートが受けづらくなることが挙げられます。引受先のUSバンコープは、顧客層の薄い日本からの駐在員向けのサービスを削減することが予想されます。長期の口座使用を考えるのであれば、ウェブサイトの情報を英語で読んだり、英語のチャットでやり取りをするようなことが必要になるでしょう。
また、ユニオン・バンクの売却完了後は、カリフォルニアアカウント・プログラム自体がなくなることが予想されます。日本在住の日本人が日本にいながらアメリカの銀行口座を開設することができるのは、今後数ヶ月から数年だけでしょう。
留意点
ユニオン・バンクの口座を実際に預金封鎖対策として使用するにあたり、いくつか留意点があります。
ひとつは、いざ預金封鎖となった場合には、当然外貨の購入や送金も制限されるため、あらかじめ口座にドル預金をしておかなければならないということです。
2022年1月現在、ユニオン・バンクのセービング口座の利率は0.05%とそれほど高いわけではありません。対策のために置いておくドル預金は、この低い利率を甘んじて受け入れなければなりません。
ふたつ目に、アメリカの銀行口座といえども預金封鎖のリスクがゼロになるわけではありません。各銀行は顧客の国籍や居住地を把握しています。もしもアメリカ政府が日本政府からの要請にしたがって米国内の口座まで差し押さえてしまうような事態になれば、この対策は意味をなさないことになります。
最後に、いざ預金封鎖が実施されたとしても、その最中に預金を使用するのは難しいかもしれないということです。封鎖されている日本の口座に送金するのでは意味がありませんし、預金封鎖が実施されるような極端な状況ではデビット・カードやクレジット・カードの使用も制限されてしまうでしょう。
あくまで財産税を課税されて強制的に取り上げられるリスクを軽減できるだけで、口座内の資金を国内で自由に使用できるわけではないということは留意する必要があるでしょう。